誰が・どこで・何を言ったか
2026年8月15日、ReHacQのお盆の生配信。4時間半のうち、新党と少子化を扱う区間をこのサイトでは収録している。出演はひろゆき氏、政治記者の今野忍氏、石丸伸二氏、高橋弘樹氏。
ここまでの議論は、公約を守らせる仕組みをめぐるものだった。公正証書、給与の差し押さえ、どこまでを約束にするか。しかしこの回で石丸氏が突いたのは、その一段手前である。
そもそも少子化対策に意味があるのか。新党が政策の中心に据えている前提そのものが、正面から否定された。
石丸氏の主張 — 金の問題ではない
石丸氏の論拠は明快だった。
- 北欧やヨーロッパですら、人口置換水準である出生率2を上回っていない。どれだけ金を注ぎ込んでも超えないという結論をOECDがレポートで出している
- 先進国で置換水準を超えているのはイスラエルぐらいしかない
- 日本の若年層向け財政支出の割合は確かに低い。だがそれを北欧並みに増やしても、北欧が回復していないのなら、そこに答えはない
言い方は容赦がなかった。
いまだに少子化対策したら人口増えてるっていう人は気が狂ってると僕は断罪するんですけど
フランスの例も先回りして潰している。2006年から2014年ごろにかけて出生率2を回復したが、N分N乗方式・所得制限なしの家族手当・幼児教育の無償化・婚外子差別の撤廃と、GDPの4%を投じて9年しか持たず、2015年以降は1.6へ下がった。今のGDPで4%は約30兆円になる。
石丸氏の結論は、少子化を止めるのではなく人口減少を前提に社会を設計することだった。流山市の井崎義治市長が「やがて来る冬の時代をどう迎えるか」を語っていたことを引き、「僕はまともだと思いました」と評している。
ひろゆき氏の主張 — 2を目指していない
ひろゆき氏の反論は、争点をずらすことから始まった。
僕最初に2にはならないって言ったと思うんですよ
- 一つの政策で出生率が2になる「銀の弾丸」はない。それは前提として認める
- ただし個別の政策には、出生率を上げるもの・下げるものがある。0.05上がるものを見つけたら、それを日本中でやればいい
- 上がったり下がったりしている以上、政策によって上がることは証明されている
石丸氏が「焼け石に水では」と迫ると、ひろゆき氏は「焼け石に水でもちょっと温度が下がるからいい」と受けた。そのうえで、水をかけ続けた先に効果の大きい政策が見つかる可能性があるのだから、探す作業そのものをやめる理由がない、という筋である。
金額の話では、独自の計算を出した。
- 日本人は生涯で平均2億4千万円ほど稼ぎ、国民負担率が5割近いので1億2千万円ほどを納めて死ぬ
- であれば、子ども1人あたり1千万円を少子化対策に使っても、国には1億1千万円が入る
- 経済への貢献は2億円規模。「6千万円くらい使ってもプラス」
具体策として挙げたのは、論文で効果が確認されているものだった。子どもがすでにいる家庭に家賃補助を出して部屋を広くする、男性の育休を義務にする(フランスは義務のため、家にいる以上は育児に参加することになる)。
東京の私立受験を、少子化の原因として名指しした
数値目標については「あまり意味がない」という立場を取っている。沖縄と東京では出生率も、打つべき政策も違うからである。そのうえで東京について踏み込んだ。
- 東京は018サポートのような給付が手厚い
- そのぶん私立に受験するのが当たり前になり、かえって子どもを産みにくくなっている
- 私立高校に通わせると、高校卒業までに子ども1人あたり約1,800万円かかる
- 「子ども産んだら1,800万円だよね」となっているのが東京の少子化の問題の一つ
処方箋は、公教育のレベルを上げて授業料を安くし、私立に行かなくてもいい大学に行けるようにすることだった。大阪も沖縄も事情が違うので、自治体ごとに試し、似た条件の自治体へ横展開する。長野と山梨は近いから山梨で成功したものを長野で試す、という言い方をしている。
配信中に示された数字では、合計出生率は2025年に1.14、東京は0.96だった。
決裂しなかった論点 — 人が減った先の治安
議論の後半は、少子化対策の是非から離れて人口が減った後の社会に移った。ここではひろゆき氏のほうが悲観的である。
警察官が減れば、地方や郊外で「襲って金品を取って帰る」ことが成立してしまう。結果として金のある人は安全な地域に住み、ない人は治安の悪い地域に残る。「スポーツ選手になるか麻薬を売るかしか生活できない」地域がアメリカやフランスにある、という指摘だった。
これに高橋氏が実感で反論している。旅の番組を18年作ってきて廃村は数え切れないほど見たが、日本の国土はそこまで広くない。八王子と上野原に警察の拠点があれば維持できるのではないか、という見立てである。
今野氏は論点を整理し直した。少子化対策は治安対策というより経済対策であり、人口が減ればイノベーションも対外的な影響力も落ちる、と。石丸氏も「少子化対策しなくていいという人はいない」と述べており、対立していたのは「やるかどうか」ではなく「どこまで金を割くか」だった。
運営者コメント
この回の価値は、新党の前提が身内でない相手に叩かれたことにある。石丸氏は「再生の道」を率いた側で、ひろゆき氏が「政策が合えば応援する」と名指ししていた相手でもある。その人物から、政策の中身ではなく前提を否定された。
ひろゆき氏の応答は、実のところ目標を下げることで成立している。2を目指していない、0.05でいい、効果がなければやめる——これは「少子化を解決する」という約束ではなく、「効果を測って取捨選択する仕組みを作る」という約束である。終盤で本人が公約論に話を戻し、インパール作戦を引いて「1万人死んだ時点で無理だと言えるようにする」「撤退をちゃんとしよう」と語ったのは、その一貫性の表明だろう。
裏を返せば、新党が有権者に示せる成果は「増えました」ではなく「試して、こうでした」になる。10月に発表される公約が、その設計を正直に反映したものになるかどうかは見ておきたい。
配信で出た数字を確認した
議論の土台になった数字を、運営者が公表資料に当たって確かめた。石丸氏の主張は、おおむね裏付けが取れる。
- 「置換水準を超えているのはイスラエルぐらい」 — 正しい。OECDの集計では2024年時点で、置換水準とされる2.1を上回っているのは加盟国でイスラエルのみ(2.87)。OECD平均は1970年の2.84から2024年には1.40まで下がっている
- 「フランスは2を回復したが持たなかった」 — 正しい。フランスの合計特殊出生率は2010年に2.02、2014年まで2前後を保った後に低下し、2023年に1.68、2025年には1.56(本土は1.53)まで落ちている
- 「GDPの4%を投じた」 — やや高い。フランスの子ども・子育て支援の公的支出は2017年時点でGDP比3.6%である。石丸氏も「4%ぐらい」と幅を持たせて述べていた
- 出生率1.14、東京0.96 — 正しい。厚生労働省の人口動態統計で、2025年の合計特殊出生率は1.14(10年連続低下で過去最低)、東京都は0.96で3年連続の1割れとなっている
つまり、「先進国では金を積んでも置換水準に戻らない」という前提そのものは事実である。争点は事実認識ではなく、そこから何をするかの判断にあった。
※本記事は上記動画の内容を運営者が独自に要約したものです。正確な発言は必ず元動画でご確認ください。数字の裏付けはOECD(Pensions at a Glance 2025 ほか)、厚生労働省人口動態統計、労働政策研究・研修機構およびジェトロの報告に拠っています。
