誰が・どこで・何を言ったか

2026年8月15日、選挙ドットコムちゃんねるに泉房穂氏が単独で出演した約1時間の回。聞き手は選挙を専門に追っている山本期日前氏である。

これまでの発信は、公約を守らせる仕組みの説明が中心だった。この回が違うのは、聞き手が選挙の実務家だという点にある。どの選挙区を選ぶか、いつ候補者を出すか、どう勝つか——新党が実際にどう戦うのかが、初めてまとまった形で語られた。

出発点は「当選」ではない

冒頭で本人が置いた前提が、この構想の設計思想そのものだった。

当選が目的じゃなくて、当選した後に政策実現まで、どこまで見極めてたどり着くかがポイントで、そこから逆算ですけどね

当選までを一緒に戦って終わる応援は、これまでにも多かった。だから今回は当選と政策実現をひとつの塊にする。逆算の起点は投票日ではなく、当選後に予算案や条例案が通る場面に置かれている。

なぜ東京23区なのか

理由は4つ挙がった。話題づくりのためではない、と本人は否定している。

公正証書は、弁護士としての回答だった

給与差し押さえの発想がどこから出たのかについて、経緯が語られた。ひろゆき氏が「こんな嘘ばかりつく選挙に意味がない」「そんなことができるんですか」と問い、それに答えたのが泉氏だった。

一応弁護士なので、こういう形であれば、当選した後の1年以内にこれをしてください、しなかったら1年分のもらった報酬、ボーナス全部吐き出させることができますよ

ただし実際に作る段階で壁に当たる。公証人が条件の曖昧な文書を作ってくれない。そこで約束の対象を「予算案・条例案を提出するところまで」に絞り込んだ。議会が否決するかどうかは首長の権限外だからである。

二人の役回りは、世間の印象と逆だった

この回でいちばん意外な情報は、新党内部の力関係だろう。

私が抑える役なんですよ

ひろゆき氏のほうが要求水準が高く、地域の事情を問わず「これを守らなかったらダメ」と押してくる。市長を12年務めた泉氏が、実現可能性の線を引く側に回っているという。

公約の数でも割れている。泉氏は「極端な話1個でいい」という立場である。目玉となる約束をひとつ確実に守り、成功事例を作ることを優先したい。できれば3つほしいが、1つでも成立すると考えている。ひろゆき氏はもっと多く求めている。

現実的な実現可能性のラインのストライクゾーンのギリギリを投げたいわけ。ボール投げたって守ってくれませんよ

議会対策を12年間しなかった

「議会とねじれると大変では」という問いに、本人は「気にしない」と即答した。明石市長の12年間、議会で与党になったことは一度もなかったが、それでも予算は通り続けたという。

理屈はこうである。事前に議会と調整しようとするから、出したい予算案が出せなくなる。調整せずに出せば可決される。市民が応援している政策に、議員は反対しにくいからだ。

市民が味方だったら、市民の敵に議員は回したくないので、予算案は通ります

実例として所沢市の名が挙がった。応援した新人候補が3期目の現職を破って10月に就任し、最初の1月議会で子ども医療費の18歳まで無償化と給食費の無償化を提出して可決している。ポイントは「通ってすぐ出すこと」だという。

報道は開票の瞬間まで読み誤る、という経験則

泉氏が繰り返したのは、下馬評と結果のずれだった。自身の選挙でも応援した選挙でも、開票日のテレビカメラは全部相手陣営に行く。政党幹部や業界団体に取材すれば「勝てるわけがない」と言われるからである。

自身の1回目の明石市長選は、全政党が相手を応援し、業界団体も宗教団体も労働組合も相手に付いた。それでも69票差の僅差で勝っている。当時の兵庫県知事のコメントは「足すともっと楽にいけると思った」だった。

組織を足していって積み上げて票を数えている。違いますから。1人1票だから

三田市長選をめぐる報道の誤解にも触れている。争点は市民病院だったと報じられたが、病院の設置権限は都道府県知事と政令市長にしかなく、一般市の市長には権限がない。だから公約に掲げていない。実際の目玉は明石と同じ子育て支援で、それが響いて勝ったのだという。

統一地方選をどう使うか

戦略上の分岐も語られた。統一地方選は前半と後半で日程が分かれる。

前半で勝てば「え、勝ったのか」という驚きを作れて後半に効く。ただし14しかない選挙で勝てると読み切るのは簡単ではない。山は後半に置くというのが現時点の組み立てだった。

擁立の線引きも明示された。負け戦はしない。初めから負けが分かっている選挙区には出さず、状況次第で逆転し得るラインまでを対象にする。

運営者コメント

この回の価値は、構想が「戦い方」として語られたことにある。公正証書の話は繰り返し報じられてきたが、それをどの選挙区で、いつ、誰に対して使うのかは語られてこなかった。

とくに記録しておきたいのは公約の数をめぐる不一致である。泉氏の「1個でいい」とひろゆき氏の「もっと」は、10月に発表される公約の形をそのまま左右する。項目が少なければ守りやすく成功事例を作りやすいが、有権者には物足りなく映る。多ければ逆になる。どちらに寄るかで、この構想が何を優先しているかが分かる。

もう一点。泉氏は選挙を「足し算ではない」と繰り返した。組織票を積み上げる発想を明確に否定している。一方で新党は候補者を公募し、地縁のない落下傘候補も否定していない。組織も地縁も使わずに首長選を勝つという前提が、23区で12回連続して成立するのか。そこが最大の未知数になる。

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