何があったか
2026年8月5日放送の ABEMA Prime に、ひろゆき(西村博之)氏が出演した。番組は前半が消費減税の閣議決定、後半が「新党を作る意味」と題した新党特集という構成だった。
ゲストは2人。前彦根市長で「再生の道」代表代行の和田裕行氏と、前参議院議員で「日本自由党」総裁の浜田聡氏。どちらも新党を立ち上げた当事者であり、いわば「新党の先輩」との三者討論になった。
この回の価値は、これまで「公約を守らせる仕組みを作る」という一言で語られてきた部分の、初めての具体的な設計が本人の口から出たことにある。
1. 公約違反への金銭ペナルティ
もっとも新しかったのがこの部分だ。ひろゆき氏の説明を整理すると、こうなる。
- 公約は5本程度を設定する
- 候補者と党の間で公正証書を作る
- 当選後、公約を1本守れなかったごとに1,000万円を党が回収する
- 市長の給料は年1,000万円ほど。つまり給料を差し押さえる形になる
- 回収した金は党が持つのではなく、その自治体の市民に返す
本人の言葉としてはこうだ。「できなかったら、この人無給になりますよ、という公正証書を作る」。司会が「今は当たり前にもらっている給料を成果報酬にして、できたら受け取ってください、できなかったら党として回収し市民にお返しする、という考え方ですね」とまとめると、ひろゆき氏は「そうしたいと思ってます」と応じた。
そもそもの動機は、公約が守られない現状への不満だという。「花粉症ゼロとか満員電車ゼロとか、結局できてないじゃんって言っても、何の問題もない社会じゃないですか」「公約を決めて守らなかったら罰則がある構造にしないと、公約を守る社会にならない」。
そして、それを既存政党の内部でやるのは無理だという読みがある。「自民党の中から候補が出たら、自民党の候補を自民党が訴えるはまあないよね。仲間内だから」。だから、党から独立した第三者として金銭的な縛りをかけにいく、という発想になる。
ただし、実現できるかは未確定である。 ひろゆき氏自身が「これが法律的にどうなのかっていうのを、まだちょっと泉さんと(詰めていない)。弁護士なんで詳しいんですけど」と留保をつけている。首長の給与は条例で定まるものなので、党との私的な契約でそこに手をつけられるのかは、相当に詰める必要がある論点だろう。
なお選挙の供託金を誰が負担するかについては、党が出す場合も候補者に自腹を切ってもらう場合もある、としてまだ決めていないと述べた。
2. 7月末の設立は「前倒し」だった
もう一つ、経緯として重要な説明があった。
「これ本来は僕ら、発表10月予定だったんですよ」
7月下旬の時点で、ひろゆき氏は翌日に日本を離れる予定だった。政治団体の設立届は日本にいるときでないと出せないため、「団体を作るだけ作っておこう、で帰ろう」として7月27日に届け出た。ところがその後ベトナムへ移動したところ、滞在中にリークされたニュースを見ることになったという。
だから今の状態は、こう説明される。「いろいろ決めなきゃいけないことが決まってないんですよね。なので、あんまり話せることがない。なぜなら決まってないからなんですけど」。
これは新党の情報の少なさを理解するうえで大きい。7月末以降ほとんど中身が出てこないのは、伏せているからではなく、本当にまだ決めていないからということになる。当初の予定どおりなら、党名も公約も10月にまとめて発表されるはずだったわけだ。
3. なぜ議員を出さないのか — 理由はお金の構造
首長だけを狙い、議員を出さない理由についても、これまでより踏み込んだ説明があった。
「僕らがあえて議員を出さないって言ってるのは、政党交付金をもらう気ないし、議員からも金を取る気がないからなんです」
ひろゆき氏の説明では、既存政党は議員から党にお金が入る構造になっている。自民党なら国会議員になると200万〜400万円を党に納める。NHK党なら地方議員の歳費の10%。「そうやってどんどん財政を大きくしようとするのをやるんですけど、僕らはそれをやらなくていい」。
つまり、議員を増やす動機そのものがない、という整理だ。「単純に、その地域でこの公約をやる人に政治家をやってほしい、という人を支援する団体を作るので、僕が出る必要がないという認識です」。
4. 候補者は「民間人ベース」でやりたい
候補者像についても方針が語られた。ひろゆき氏が避けたいのは、選挙に落ちた政治家の受け皿になることだという。
「辞めて無職になって職に困っている政治家とかが集まってくると、それはちょっと違うだろうと思って。なので、できれば僕、民間人でやりたいんですよ」
理想は、これまで政治に関わっていなかった人が地元を変えるために出てくる形。元銀行員が首長になって従来の政治家とは違うことをやった例に触れつつ、同時に難しさも認めている。「とはいえ、まともな民間人はまともに働いているので」。
選考については、民間で審査委員会を作る構想が示された。ひろゆき氏自身も入る見込みで、加えて知名度のある民間人に加わってもらいたいという。判断基準は政策の細部ではなく「推せるかどうか」。自身が乙武洋匡氏の選挙応援に立ったのは「単純におもろいから」だったと明かし、そういう「推す能力がある人」を審査員に入れたいと語った。
5. 現職に「公約を入れてくれ」と申し入れる道もある
擁立一辺倒ではないことも分かった。番組で北区長選(東京)の話題が出たとき、ひろゆき氏は現職の山田加奈子区長について「山田さんまとも説があるので」と述べたうえで、こう続けた。
「公約を次回の選挙に入れてください、という申し入れはしたいと思ってます。それを入れてくれないんだったら、対抗馬として誰か出るかもしれません」
つまり、対立候補を立てるだけでなく、現職に公約を飲ませて目的を達するルートも併走させるということだ。目的が「自党の議席」ではなく「公約の実行」に置かれているという主張と、一応整合している。
6. 「再生の道」との違いを、当事者の前で
同席していた和田裕行氏は「再生の道」の代表代行である。番組は、再生の道が「人材を政治に送り込むプラットフォーム型」、新党が「考え方に賛同する首長候補を増やすフランチャイズ型」と紹介し、両者の違いを問うた。
和田氏の答えは「大きな違いは特にない」だった。再生の道も、普段政治に関わっていない人に関心を持ってもらい、政治の舞台に入ってもらうためのプラットフォームである、と。
これに対してひろゆき氏は、明確な線を引いた。
「僕らは、もうこの公約の約束は絶対守ってください。これが守れないんだったら、もう連絡してこなくて結構です。再生の道は逆に、公約を決めないでやったじゃないですか。だからそこが大きな違いだなと思います」
そのうえで、なぜ公約に強くこだわるのかを語っている。「約束を守る人たちを政治家の中で増やさないと、政治家って嘘つきだよねって言われたときに、そうだよねってなっちゃうじゃないですか。でも、政治家は嘘つかない人もいるよって子供に言える時代にするには、嘘つかない人たちの団体もないといけない」。
7. 政策として挙がった具体例
公約の中身は10月発表予定で未確定だが、ひろゆき氏の頭にある具体例がいくつか挙がった。
- 学校の先生に残業代を出す。「予算が限られていて、先生は言われたことをずっとやるから、残業代を使いたい放題にして、と納得させられてしまっている。頑張る人ほど損をする。これ良くないよね」
- 外国人の固定資産税を上げる。「日本の土地は日本人が住んで働くためにあるものだと思っている」としつつ、「これが地方自治体として法律的に可能なのかどうかはちょっと難しい」と自ら留保をつけた
- 神社や寺の修繕費を自治体が出す。重要文化財ではないものの修繕費は寺社の自腹だが、実際には街の広場として祭りや憩いの場に使われているのだから、街が予算を出すべきではないか、という趣旨。これも法的な難しさに触れている
これらの根っこにある目標として、「20代の平均収入でも子どもが産める地域にする」が示された。ひろゆき氏の見立てでは、結婚した人が子どもを持つ割合そのものは20年前とあまり変わっていない。変わったのは結婚する年齢のほうで、「今はもう初婚が30代になっちゃってるので、1人目を産んだらもう高齢出産で次は産めないよね。なので、せいぜい1人という状態になってしまった」。だから、30代以下の平均収入の人が結婚して子どもを持てる状態にするのが先だ、という順序になる。
8. 妻・ゆかさんの件について、本人の説明
報道で「パートナーが難色を示している」と伝えられていた件について、番組で直接問われ、初めて本人の説明が出た。
ひろゆき氏によれば、ベトナム旅行に一緒に行っていたにもかかわらず、その間この話をしていなかったという。それで「今アベプラで説明してるよりも先に言うべきじゃないの」と言われた、と本人が明かしている。
説明しなかった理由については、こう語った。「僕、会社を作るのと同じで、事業をこういうことをやることになりました、本社が京都です、引っ越しは京都になります、となるんだったら(言う)。ただ、会社法人って紙切れだし、政治団体も紙切れで、まだ何も決まってないから、僕はまだ説明することは特にないという認識だったんですよ」。
その後については「いろいろ話して、大丈夫そう」としつつ、「いつも大丈夫かって言って、いつも大丈夫じゃないけど」と付け加えている。
関連して、日本に帰ってくるつもりや転居の予定はあるのかと問われると、ひろゆき氏はそもそも自分が出馬する必要はないという答え方をした。「例えば世田谷区の区長選を出しますというとき、世田谷に詳しい人が出た方がいいじゃないですか。なので、僕じゃない方がいいんですよ」。広島ならお好み焼きに詳しい人、大分なら温泉に詳しい人が出た方がいい、という言い方もしている。日本に来る頻度が上がるのではという問いにも、「直接会った方がいいのもあると思うんですけど、リモートもできる時代なんで」と答えた。
9. なぜ今なのか
動機についても語っている。
「49歳になりまして、ある程度、経済的な自由もあり。なので、これはちゃんとやった方がいいよね、となんとなく思ってることを、やろうとしてみてダメだったら、ダメだったなっていうのを納得して死んだ方が、多分死にやすいかな」
過去にデジタル庁に関わった経験にも触れ、「文句を言ってるだけよりも、ちゃんと関わろうとしてダメだったら、もう納得がある」「政治家にもいろいろ文句は言っていたので、実際やったら難しいよ、とよく言われる。本当かよって思ってるんで、やろうとしてみてダメだったら、間違ってました、すいませんってなるし、できたらできたでよかったよね、ということで、別に誰が損するの」と語った。
なお番組の最後には、「知名度のあるタレントさん募集しております」「この政策だったら推せるよね、という形で関わってくれる有名な方、募集しております」と、公然と呼びかける場面もあった。候補者志望者の窓口は泉房穂氏側で、連絡すれば泉氏が会いに行く、としている。
運営者コメント
新党について語られた材料としては、7月末の設立報道以降でいちばん中身のある回だった。
最大の収穫は「公約を守らせる仕組み」が抽象論から具体案に降りてきたこと。公約5本、1本1,000万円、公正証書で給料差し押さえ、という設計は、少なくとも本気度としては疑いようがない。一方で、本人が「法律的にどうなのか、まだ詰めていない」と認めているとおり、ここは実現できるかどうかが最大の関門でもある。首長の給与は条例事項であり、そこを党との私的契約でどう縛るのか。10月の公約発表と同時に、この仕組みの法的な形が示されるかどうかが見どころになる。
もう一つ大きいのは「本来は10月発表予定だった」という説明だ。これで、この1週間ほどの情報の薄さの理由がはっきりした。まだ決まっていないから語れない、という状態が続いているわけで、次にまとまった情報が出るのは予定どおり10月上旬になる可能性が高い。
そして、再生の道の代表代行を前にして「公約を決めないでやったじゃないですか」と違いを述べた場面は、この新党が何を自分たちの独自性だと考えているかがよく出ていた。人材を送り込むこと自体が目的なのではなく、特定の公約を実行させることが目的である、という立て付けを崩す気はないらしい。裏を返せば、その公約の中身が薄ければ全部が崩れる設計でもある。
※本記事は上記番組の内容を運営者が独自に要約したものです。正確な発言は必ず元動画でご確認ください。